児童精神の医療体制整備、並びに、医療機関としての支援について | 三重県議会議員 喜田健児
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児童精神の医療体制整備、並びに、医療機関としての支援について

令和3年12月8日の一般質問の内容、三重県における児童精神の医療体制整備、並びに、医療機関としての支援についてです。

 

喜田健児の問題意識

様々な困難を抱える児童がいたときに、行動認知療法や服薬も含めた治療につなげたほうがいい、緊急性が高いと思っても、児童精神科に初診予約を取るのは非常に困難な状態になっています。

 

三重県における児童精神の医療体制整備、並びに、医療機関としての発達障がいや精神疾患の子どもたちへの支援の充実を求めました。

 

実際の質問のやり取り

【質問】

三重県における児童精神の医療体制整備、並びに、医療機関としての支援についてです。
一つの事例を紹介させてください。ノンフィクションです。
S君は幼少の頃、友達の気持ちがなかなか理解できず、うまく友達と話をしたり、遊んだりするのが苦手でした。発達障がいを親御さんは意識しましたが、勉強はできたので、それほど深刻に受け止めませんでした。
小学校3年生、4年生頃に友達とうまくいかず、悩んでいるように見えました。その頃、うそをついたり、兄弟に強く当たったりすることが増えていきます。荷物や学校のプリントなどの整理ができずに、机の中やロッカーにはいろんなものが入っています。塾や習い事の宿題のことで、度々、親ともめるようになっていきます。
S君は、外圧的マスト、こうでなければならないという、そういう時期が続き、そして強迫症を発症しました。床を素足で歩けない、ドアノブを触れない、だからティッシュペーパー、タオルを使いまくり、手を何度も洗い続けるという症状が出現したのです。
そのときに、親御さんは困って助けを求めたのです。学校関係者から、精神科医に診てもらったほうがいいよというアドバイスを受けて、まずは、有名な子ども心身発達医療センターに早速電話しました。
すると、今年度の予約は終了しています。令和4年度の予約は、令和4年になってからホームページでお知らせをしますので、それまでお待ちくださいと言われ、その次の病院では、早くて3か月待ちです。月初めの1日が初診予約の日ですので、その日に電話してくださいと言われ、次の病院では、月の2日です、その日に電話してくださいと言われ、待ちが長くても予約を取らないといけないと思い、その次の1日、2日に電話すると、ずっと話し中、夕方につながったと思ったら、来月分の予約は終了しました、また来月電話してくださいと言われました。
他の病院も、どこもこのような状態でした。どうしようもないので、大人がかかる地域のメンタルクリニックに電話しました。Sクリニックは2月まで空きがありません。Tクリニックは今年度は空いていません。辛うじてS市のメンタルクリニックが中学生ということもあり予約が取れました。
強迫症発症から5か月が経過しています。診察を受けて、一刻も早く児童精神科医に診てもらったほうがいいと、その精神科医は言います。S病院に紹介状を書いてもらい、ようやく児童精神科のドクターにつながることができました。
児童精神科医に相談をかけたいと思って行動し始めて5か月の間、本人が一番苦しくて、つらかったことと思います。親御さんはじめ、周りの理解が全くないことへの苦痛は計り知れません。
そして、その家族、親御さんもまた、目の前で壊れていく我が子を見ることの苦しみ、そして不安に襲われます。何とかしようと思って注意をすると子どもとぶつかり、そのことで子どもの症状を悪化させてしまいます。
専門的な知識がないために適切な支援ができず、本人の行動に対して家族の誤った対応が起こり、本人の症状が悪化して、家族が疲弊していくという悪循環が、この三重県で起こっております。
このケースは、学校が絡んでいないレアなケースですが、ほとんどの場合、このような精神病や発達障がいの場合、学校ではスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーとチームを組み、教育委員会が福祉と連携を図ります。時には、児童福祉司、児童心理司、臨床心理士につなぎます。
しかし、この先が大きな課題です。スクールソーシャルワーカーは、私たちが話を聞いて、行動認知療法や服薬も含めた治療につなげたほうがいい、緊急性が高いと思っても、児童精神科に初診予約を取るのは非常に困難な状態です。
どこの精神病院も、その子どもの保護者から直での予約は困難であり、精神病院とつながりのある病院の紹介状が必要であるが、それでも予約がすぐに取れるとは限らないと言います。
県内六つの児童相談所を1人で担当している児童精神科医の高城ドクターも容量オーバーで、診療は非常に困難を極めて難しく、そのドクターの紹介状があれば、他の児童精神科医につなぐことはできるんですが、1人で県内六つの児童相談所を受け持っているため、相談するための予約すら取るのが難しいというのが現状です。
このスライドをちょっと見ていただけますか。(パネルを示す)中勢・伊賀地区、ここに載っている医療機関、私、全てに電話させていただきました。私が先ほど言わせていただいた事例と全く同じ状態でございます。
そこでお伺いします。
三重県における児童精神の医療体制整備、並びに、医療機関としての発達障がいや精神疾患の子どもたちをどのように支援していくのか、医療保健部、子ども・福祉部、病院事業庁にそれぞれお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

【医療保健部長答弁】

 

児童精神科の医師の確保の観点から、まず、御答弁申し上げたいと思います。
児童精神科医につきましては、小児科及び精神科にまたがる領域を専門とする医師ということでございまして、児童精神科医の育成を行っていくためには、まずは、その基本領域となる小児科及び精神科における専門医の育成が必要と考えてございます。
県では、これまで医師確保対策を総合的に進めてきた結果、県内の医師の総数は着実に増えてございます。人口10万人当たり医師数は223.4人で、全国36位であり、増えてはおるんですが、依然として厳しい医師不足の状況にあるという現状でございます。
また、小児科につきましては、人口10万人当たり12.2人で全国33位、精神科においては12.1人で全国31位と、いずれも児童精神科の基本領域となる診療科において医師が少ないという状況でございます。
このような背景を踏まえ、県では、令和元年度に三重県医師確保計画を策定しまして、これに基づき、継続した医師の総数確保に取り組むとともに、小児科や精神科といった基本領域の専門医の確保にも取り組んでいるところでございます。
専門医の確保に当たりましては、平成30年度から開始されました新専門医制度に合わせて、県内の医療関係者で構成する三重県地域医療対策協議会の中に医師専門研修部会を設置いたしまして、地域医療の確保の観点から、専門研修プログラムの内容等について協議を行い、専門医の確保に向けた環境整備を進めているところでございます。
その中で、児童精神科領域につきましては、三重大学医学部附属病院の小児科専門研修プログラム及び精神科専門研修プログラムの両方におきまして、県立子ども心身発達医療センターを連携施設に含めまして、児童精神科領域に関する研修機会の確保に努めているところでございます。
さらに、小児科につきましては、専門医を確保するため、小児科を希望する医師に対するセミナーの開催でありますとか、研修会等への参加経費を支援する事業を令和3年度から開始したところでございます。
今後につきましても、児童精神科領域に関する魅力や達成感を感じていただけますよう、子ども・福祉部と連携し、児童精神に関する研修の受講等の環境整備を進めて、児童精神科医を含めた専門医の確保に努めてまいりたいと考えてございます。
なかなかその児童精神科そのものを、領域がないということで、直接的に育成するというのが困難な状況の中で、やはりこの基本領域であります小児科、精神科の中で、そういった児童精神に触れていただく機会をつくっていって、そういったところへ研修に行っていただいたドクターの方が魅力を感じていただいて、将来、そこの道に進んでいただくような環境整備をしていくことが必要だと考えてございますので、引き続きそういう対応を続けてまいりたいと考えてございます。

【子ども・福祉部長答弁】

私からは、子ども心身発達医療センター等におけます取組について、お答えさせていただきたいと思います。
県内の発達障がいの診療拠点施設となります県立子ども心身発達医療センターでは、受診希望者の増加に伴いまして、現在、診療枠を増やして診察に当たっているところでございます。
しかしながら、地域の医療機関において児童精神科の診療中止が相次いだことなどにも起因いたしまして、センターへの受診が集中しておりまして、初診待機の解消にはなかなか至らないという状況にございます。
受診希望の増加が続く中で、これらの御希望をセンターだけで全て受け入れるのが難しいことですとか、あるいは、御本人にとっても、より近くの医療機関で診ていただけるというメリットなども考えまして、児童精神科以外の地域の医療機関でも一定の診療科が行っていただけるように、令和2年度から小児科医等を対象にいたしました発達障がい連続講座を開催しております。これまで延べ365名の医師に受講いただきました。
この講座によりまして、県内の四つの小児科で新たに診療に御協力いただけるようになったところでございます。こうした取組を進めていくことで、発達障がいの診療が可能な小児科医等を身近な地域に確保していきたいと考えておるところでございます。
また、その際、発達障がいの診療では、幼児期の状況ですとか生育歴、家庭や学校での行動などの聞き取りに細心の注意や多くの時間を要します。
講座を通じて診療を始めていただきました小児科医等が、それぞれの地域で子どもを継続的に受け入れていただくためには、その労力に見合うインセンティブも必要であると思っておりますことから、診療報酬の見直しについても国へ要望してまいります。
また、発達障がいの支援におきましては、早期発見・早期支援が重要であることから、子どもたちの身近な地域における支援体制の構築が必要であります。
センターでは、市町において発達障がいの相談支援に当たる専門人材の育成を行い、地域の小児科医や関係機関等による支援体制の構築を進めているところでございます。
さらに、小学校で集団生活になじむことができない、あるいは、授業中に座っていることができないなどの困難を抱える子どもたちへの支援も必要でございまして、このため、既に保育所等で導入の効果を確認しております支援ツールのCLMと個人の指導計画、チェック・リスト・イン三重といいますけれども、チェック・リスト・イン三重と個別の指導計画が発達障がい児が集団生活でも困難なく過ごすための支援ツールとなっておりますけれども、この小学校版を活用いたしまして、切れ目のない支援を進めてまいりたいと考えております。
今後も引き続き、センターの初診待機解消に向けました勤務医の確保ですとか、身近な医療機関における診療の充実に取り組むとともに、医療保健部と連携いたしまして、医師の児童精神科医療に対する理解を深めるなどして、発達に課題を抱える子どもや家庭への支援を充実してまいりたいと考えております。

【病院事業庁長答弁】

こころの医療センターに関してお答えさせていただきます。
こころの医療センターでは、昭和60年に児童部門が、子ども心身発達医療センターの前身の一つであるあすなろ学園として独立して以来、児童精神に係る診療につきましては、他の医療機関からの要請があった場合や直接来院された場合に、可能な範囲で対応してきているところでございます。
そうした中で、精神科医療における早期発見・早期治療の効果が高く評価されるようになってきたことから、平成20年に、院内にユース・メンタルサポートセンターMIEを設置いたしまして、精神面での問題や悩み、不安を抱える若者やその御家族、あるいは学校関係者などからの相談に対応しているところです。
相談の件数は、ここ数年、約170件前後で推移しておりまして、内容としては、主に不登校や抑うつ、自傷行為、自らを傷つける行為や暴力行為などで、年齢別では、15歳以下に関するものが約20%、16歳から18歳に関するものが約25%となっております。
これらの相談には、現在、精神保健福祉士2名が専従で対応しておりまして、必要に応じて診療につなげたりしているところです。また、相談に対応するだけでなく、子どもたちや保護者、教員などを対象に、メンタルヘルスに係る研修なども実施しているところです。
これらについて、今後もしっかりと取り組んでいくとともに、スクールカウンセラーが集まる会議の場でも引き続き丁寧に説明して、周知を図ってまいります。
このほか、こころの医療センターでは、若年層に対する医療を充実させるために、昨年度から3年間の予定で、子ども心身発達医療センターに医師1名を人事交流の形で派遣しております。
今後、これにより得られる児童精神分野の専門的なスキルを院内で十分に生かし、また共有することで、若年層への医療の充実につなげるとともに、子ども心身発達医療センターとの連携を一層強化しながら、児童期以降にかけて途切れなく支援していけるよう取り組んでまいります。

【質問】

それぞれから御答弁をいただきました。
診療報酬の見直し、国への要望をしていきたいと。そこが、国が変わらないとというところが根本にあると思いますので、私自身も国への要望ということは経験がありませんので、会派の皆さんと相談しながらやっていきたいなと思います。
私は毎年11月から、松阪市内の全ての幼稚園と小学校、中学校を訪問して、現場の様子を聞かせてもらっています。どの学校においても、特別支援学級籍の子どもと特別な支援が必要な子どもが増えているという話になります。ある学校のあるクラスでは、1対1の支援の必要な子どもが6割、7割に達すると聞かされました。昔の学校とは明らかに違います。このような実態が表れている背景には何があるんでしょうか。
私なりの見立てはあるんですけれども、何が増えたかというと、一言で言うと、親の愛情不足、愛着障がいは発達障がいと同じような症状が、同じような凸凹が起こると言われています。
この支援の必要な子どもたちは、自分はなぜ周囲と同じようにできないのか、誰も自分のことを分かってもらえないと悩み、いらいらしたり不安に襲われたりします。それに加えて、親からの虐待、貧困によって生活が困窮など、不適切な養育環境がそれと絡み合って事態を複雑化、深刻化させて、うそをつく、暴力を振るう、不登校、突然キレるなどの表現が子どもから出てくるわけです。こうなる前に適切な処置をすることはとても大切です。子どもたちは大きなサインを出しています。
そのサインと向き合うことは、その子の行動をじっくり見て察知する、この子、何かあるなと。そして、その子と向き合い、じっくり聞いて、言葉を拾ってあげて、今の気持ちを理解して安心させてやって、本当のしんどい部分を引き出して聞いてあげる、そしてそのことを聞いた自分自身がどんな気持ちになったのかというアイメッセージを伝える作業が必要です。
これは、現場の先生の声を借りると、そんじょそこらにあるもんじゃないという作業になります。なぜなら、生きづらさがストレスとなり、鬱や双極性障がい、強迫症を発症させて、自殺する危険性を生むからです。
昨年度、この国で自殺した児童や生徒は初めて400人を超え、その内訳は、小学生7人、中学生が103人、高校生が305人、計415人となっています。小・中学生の不登校は19万人以上、いずれも過去最多です。
学校が福祉、医療とタッグを組むことはとても重要であると言えます。その間に入るのがスクールソーシャルワーカーです。スクールソーシャルワーカーの声に私たちはもっと真摯に向き合って、耳を傾けなければなりません。
最後に、スクールソーシャルワーカーの生の声を紹介させていただきます。知事の感想を求めたいと思いますので、早口でしゃべらせていただきます。
先生たちは早期発見、早期支援、早期治療を求めて、私たちスクールソーシャルワーカーに相談をかけてきますが、先生たちは忙し過ぎて時間が取れるのは放課後ぐらいしかなく、その時間から相談に乗って、学校としてのケース会議を開くことになりますが、私たちは常勤ではないので、その次、この学校に来る日までできないとなります。
結局、家庭訪問は先生だけで行って、子どもの様子を伝えるけれども、親御さん的にはあまり危機感を持っていないケースが多いです。先生は、この子は間違いなく生きづらくなり、苦しくなると分かっていても、スクールソーシャルワーカーにもタイムリーに相談できずに後手後手となり、スクールソーシャルワーカーと共に福祉や医療につなぐことも、今の三重県の医療体制では困難な状態です。
本来なら、この子はなぜ不登校になっているのか、様々な角度からひもといて見立てが必要です。それが現場でできるその子への早期支援となるからです。それができずに、全てが先生の肩にのしかかっている状態です。
だから、私たちは、学校に入るときは、支援の必要な子どもに寄り添う前に、学校の先生に寄り添っていかなければなりません。これが現実なんです。寄り添うって、先生たちが浴びている冷たい水を一緒に浴びることなんです。その先生の責任でも何でもないのに、無力感に襲われ、自分は通用しないと自己否定して、その気持ちに耳を傾けて、共に前を向くことができるか。
でも、それができたとしても厳しい現実が待っています。重症化していく子どもたちを見ながら、自己否定をしていく先生たちが……。すみません。これ、ここ何度も駄目なんです。先生たちが病んでいくのは当然のように思います。
このスライド、最後に見てください。(パネルを示す)ほかの職種よりも精神疾患を患う先生たちは多いです。学校の先生たちが一人ひとりと向き合うことができるようにしてあげてください。これが一番の不登校対策だと思います。
スクールソーシャルワーカーを増やしても、それを活用する学校に体力がなければうまく機能しません。私たちスクールソーシャルワーカーの勤務についても、現場に即したものにしていく必要性を感じます。
また、早期発見するために知能検査、ウイスク知能検査をする場所と検査する人を増強してください。この検査待ちを解消するだけで大きく前進すると思います。
知事、すみません、残り2分ちょっとになりましたけれども、先生たちの悲鳴は子どもたちの叫びだと思うんです。今の教育現場を救わないと手後れになります。
10年前に、三重県は先進的に少人数学級をやりましたけれども、この10年間で他県にどんどん追い越されて、いまだに三重県は40人学級で、この状況では不登校も減りません。学校の先生たちの精神疾患を患うのも救うことはできません。
すみません、最後に知事、よろしくお願いします。

【一見勝之知事】

教育の現場の生の声をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。
私も教育に詳しいわけではないので、私の親族に教員をやっている人間がおりますので、話を聞いてみました。
帰りも遅くて、かつ自分でやったこともない部活動を教えなきゃいけないので、ビデオを見て、それで教えていると、そういう実態を聞きました。変えていかなきゃいけないところはたくさんあるなという気がしています。担当の部局からも話を聞かなきゃいけないと思っています。
また、ADHDの子どもたちが増えているという実態、これは親が今まで気づかなかったところに気づいてきたというのもあるとは思いますけれども、子どもは、これからの国や三重県をしょって立つ大事な大事な人材、宝であります。そこに光を当てて、彼らや彼女たちが立派な、大きな希望を持って育っていけるように考えていきたいと思っております。
スクールソーシャルワーカーの方々の活動もしっかりと支えていかなきゃいけないと思っていますし、御指摘いただいたような教員の活動についても、しっかりと対応していく必要があろうと考えているところでございます。

【意見】

知事、真摯な御答弁をいただき、本当にありがとうございます。ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
これで終結させていただきます。ありがとうございました。

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