三重県社会的養育推進計画について (1) 里親制度の推進 | 三重県議会議員 喜田健児
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三重県社会的養育推進計画について (1) 里親制度の推進

令和3年3月9日の一般質問の内容、三重県社会的養育推進計画についてのうち、 (1) 里親制度の推進についてです。

    喜田健児の問題意識

    県の重点施策としての社会的養育推進への思いを知事に伺いました。

    実際の質問のやり取り

    【質問】

    個としては存在するけれども、その個に対して誰かが手を差し伸べないと、線でつながれないということを取り上げさせていただきます。
    瞳を閉じればまぶたの裏に、知事はどんな情景が浮かんで、誰が思い浮かぶのでしょうか。私は、父と母が思い浮かびます。父と母と生活した情景が思い浮かびます。
    しかし、この世の中には、まぶたの裏に父も母も、帰る家も思い浮かべられない、そういう子どもたちがいます。本人に何の責任もない、そういう状況にあるのに苦境に立たされている子どもたちがいます。その実態を知らないことは自己責任論を主張しているのと同じだというふうに、私は調査をする中で反省いたしました。
    そこで、三重県社会的養育推進計画、里親制度の推進についてです。
    昨年の11月に、里子5人が通う小学校を訪問してきました。その先生方に話を聞かせていただきました、現在も2人が在籍しておりますが。そこには愛情がありました。私は、里親に会いたくなって連絡を取り、会わせていただきました。
    里親とお会いさせていただいて、そこにもあふれる愛情がありました。どうしても里子の5人の子どもたちと遊びたくなって、お願いして、昨年の12月19日、ACP、アクティブ・チャイルド・プログラムの指導員の有原さんと一緒に、その子どもたち5人と遊びました。
    有原さんが、小学校5年生となるT君に、12月19日ですので、自分のジャンパーを脱いでT君にかけてやりました。T君は、ありがとうと言って、そのジャンパーをすっと脱いだんです。その脱いだジャンパーを小学校2年生の妹のところに行って、肩にそっとかけてやって、これを着なってT君は言いました。その兄弟の中にも愛情があふれていました。
    私、今日、ここでこのことを取り上げるに関しまして、里親の実の子どもが中学生のときに書いた作文と、里子として小学校4年生のときに来て、現在18歳、その子どもが中学生のときに書いた作文を預かってきました。御了解を得ていますので、少し紹介させていただきます。
    まず、里親の実の子どもが書いた作文です。
    この夏、私には2歳の弟ができました。弟は、今まで乳児園という施設で暮らしていました。初めて会ったときの弟はあまり泣きも笑いもせず、表情がとても少ない子でした。人見知りもあったのでしょうが、私はやはり親の愛情不足によるものも、弟の表情が少なくなってしまった原因の一つなんだろうと思いました。中略。
    子どもにとって、親からの愛情はなくてはならないもので、何にも代えられない大切なものです。子どもの愛される権利を奪い、子どもを愛し守る義務を放棄した親、そして何より虐待によって子どもの大切な命を奪ってしまう親を、私は許すことはできません。ですが、弟には、僕を産んでくれてありがとう、僕は生まれてきて幸せですと自分の親に感謝できるようになってもらいたいと思うし、そう思ってもらえるように、弟の両親に代わって愛情をかけていくことが、弟が生まれてきてよかったと思える手助けになると思います。
    続きまして、里子が書いた作文です。
    小学校4年生の秋、私はここに転校してきました。全く知らない場所に来て生活をするということは、すごく不安なことでした。どうしてこんなところに連れてこられたのかという気持ちでいっぱいでした。でも、当時の私には、この何も知らないここで暮らすことが一番安全に暮らせる状態であったため、それはどうしようもないことでした。
    当時の私は、家でも学校でも素直に自分を見せることができず、自分の思うままに、自分勝手な行動や反発的な行動もたくさんしてきました。家では初めてできた下の兄弟に暴言を吐いたり、少しでも嫌なことがあると、物に当たったりもしました。私が体験したつらい思いを自分よりも小さい兄弟にしてしまったことが、今ではすごく悲しく感じます。
    そんなきつい状態になると、母は私が納得するまで話合いをしてくれたり、それは間違っているとはっきり言ってくれたりしました。私は、話合いするのが嫌で悪態をついていましたが、そんな私に最後まで向き合ってくれた母や父がいたので、今の私は兄弟や物に当たることもなくなり、人と向き合うことができるようになりました。
    家族と暮らしていく中で一番思いをぶつけ合ったのは、私のそばにいる大切な人たちです。お互いがお互いのことを考えて話し合ったり、泣いたりしてきました。たくさん迷惑もかけたし、たくさん気も遣ってもらったと思います。今思い出すと、私のわがままばかりに付き添ってくれたことがたくさんあります。家族もまた私を受け止めてくれたから今の楽しい毎日があり、笑顔でいられるんだと思います。私は1人じゃないとすごく安心しました。
    私がここに来て、もうすぐ5年がたちます。たくさんの出会いがありました。〇〇家という家族、〇〇中学校の友達、教えてもらった先生方、〇〇町の地域の方々、私は幸せです。私の周りには温かい人たちがたくさんいます。ただいまと言って帰る場所がある、行ってきますと言うと、どんなに忙しくても見送ってくれる。どんなことをしていても、どんなときでも、我が子のためにいつも一生懸命に向き合ってくれる。その全てが、当たり前のことのようにしてくれる。支えてもらうこと、手を差し伸べてもらうことがこんなに温かくてうれしいことなんだと実感できました。
    私を受け止めてくれたお父さん、真っ向から向き合ってくれたお母さん、たくさんの思い出をくれた兄弟、友達、そして、ずっとそばにいてくれたR、本当にありがとう。
    たくさんの人との出会いが、私の大きな力です。私はここが好きです。ここに来て本当によかったと心から思っています。
    鈴木知事、知事がこれまで家庭的養育の推進に御尽力されていることは承知しています。改めて、県の重点施策としての社会的養育推進への思い、この作文を書いた子どもたちや同じ境遇の子どもたちへのメッセージも含めてお聞かせください。

    【鈴木英敬知事答弁】

    里親制度の推進について、また今の作文について申し上げたいと思います。個々の取組は少し割愛させていただきます。
    全ての子どもが生まれてきてくれてありがとうと言われる権利が本来あるはずです。しかし、残念ながら、大人の都合により、そうなっていない子どもたちが現実にたくさんいます。
    本年度からスタートした三重県社会的養育推進計画には、どのような家庭環境で育った子どもであっても、等しく愛情を受けて心身ともに健やかに成長し、夢と希望を持って未来を切り開いていける社会を掲げています。これが最も重要です。
    どんな家庭環境で育った子どもにも、特定の大人から愛情を注がれ、愛着を形成し、日常の幸せを、未来への希望を感じてほしい、そう心から思っています。そのため、里親制度の推進に向けて、関係者の皆さんとともに、私も先頭に立って取り組んでまいります。
    こうした中、今年は、子どもを権利の主体として尊重することを基本理念とした三重県こども条例の制定から10年の節目に当たり、全ての子どもが地域で大切にされながら育っている社会を目指すための取組を再加速させていきたいと改めて考えています。
    先ほど読んでいただきました作文についてですが、御通告に関連する資料として事前に見せていただきましたので、私も全文を拝読して、この場に臨んでおります。
    実の子どもの作文の中に、子どもには親に愛される権利がある、それから人権を奪われかけている子が全国にたくさんいる、そういうような言葉もありました。身につまされる、胸をぎゅっと締めつけられるような、そういう気持ちを感じる一方、もう一つの作文のほうには、私は1人じゃない、私は幸せですという言葉を書いてくれています。こういう言葉に安心と、そして、1人でもこう思える子どもたちを増やしていきたい、そういう気持ちに改めてさせていただいています。
    そういう気持ちにさせてくれた、作文を書いてくれたお二人に改めて感謝を申し上げ、そしてこれからもそういう気持ちを持って歩んでいってほしいと心から願います。
    そして、同じ境遇の子どもたちには、先ほど申し上げたとおり、私は幸せですと言ってもらえるように、これからも全力を尽くしてまいりたいと思います。

    【意見】

    知事、御答弁ありがとうございました。
    愛情を感じさせていただきました。この里子の子どもたちというのは、6人、私が出会ったのは5人なんですけれども、6人見えまして、当然にも父と母が違います。里親のところに来た日も違えば、そこで生活している日数も違います。
    ただ、唯一一緒なのが、帰る家がないということ、まぶたの裏に思い浮かべる父と母は、もしかしたら憎しみの対象でしかないというところが共通点です。そこに対して知事が御答弁いただきましたけれども、県行政がしっかりと太い線でつないでやる、そういう重要性を私も感じております。

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