公契約条例に関わっての「三重県建設産業活性化プラン」について | 三重県議会議員 喜田健児
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公契約条例に関わっての「三重県建設産業活性化プラン」について

令和2年2月27日の一般質問の内容、公契約条例に関わっての「三重県建設産業活性化プラン」についてです。

 

    喜田健児の問題意識

    三重県経済の好循環を作り出し県税収のアップを図る、そして、最終的に教育予算を増やすための提案です。

    若者の労働環境を守るためにも公契約条例の早期制定を提案しております。

     

    実際の質問のやり取り

    【質問】

    三重県に活力を見いだして、三重県経済の好循環を作り出し県税収のアップを図る、そして、最終的に教育予算を増やす、そんな強い思いから、たどり着いた質問がこれであり、後の五つも同じでございます。
    公契約条例に関して、過去の議事録を見ました。次に、地域の雇用を支え、災害時には地域を守り、従業員とその家族の暮らしに責任を負っている三重県建設業協会の役員の皆さんとの団体懇談会で確認したことをもう一度見直し、そして、三重県建設労働組合の執行部との聞き取り調査を行い、さらに、津市、前葉市長並びに担当の総務部の方との意見交換で学び、ここで深く掘り下げるために、水越法律事務所の水越聡弁護士と中小企業再建サポート会社の社長、教え子ですが、そこから学習レクを受けて、そして、これまでの学びをもって県土整備部の担当の方とやり取りし、最後に、16歳から大工の職人となり、今年で30歳となる教え子に私は会いたくなり、面談し、いろんなことを聞かせていただき、この場に臨んでおります。
    このように、この質問に実に多くの時間と労力を費やし、多面的角度から見てきました。その中で、この公契約法、公契約条例の制定への難しさには何があるのか、その時々で仮説を立てて追求してきました。多くの疑問をこの一般質問を通じて表に出して、制定に向けてチャレンジしてみたいと思います。
    平成16年12月17日、第4回三重県議会定例会で、「公契約法」の推進など公共工事における建設労働者の適正な労働条件の確保に関する意見書が全会一致で可決され、衆参両院議長、内閣総理大臣、総務大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、国土交通大臣に提出されています。約16年前ですから、ここに見える4期以上されている先輩議員の方は、この採決で起立して、賛成の意思表示をされていることになります。
    その意見書の趣旨は、建設業の就業者数は全産業の約10%を占めており、我が国の基幹産業として経済活動と雇用機会の確保に大きく貢献していることをまず押さえており、しかし、建設産業の特徴である元請と下請という重層的な関係の中で、建設労働者の賃金体系は常に不安定な状態にあり、加えて不況下における受注競争の激化と近年の公共工事の減少が施工単価や労務単価の引下げにつながり、現場で働く労働者の生活に深刻な影響を及ぼしていると続いています。そして、その解決のためにも、公契約法の制定について検討すること、建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われるよう実効ある施策を実施することを求めています。ただ、16年前のことですので、施工単価や労務単価の引下げのところは、現在の状況と違っていることは付け加えておきます。
    また、その意見書には、諸外国では公契約における適正な賃金の支払いを確保する法律、いわゆる公契約法の制定が進んでいるとも書かれていました。
    そこで、さらに調査を進めてみると、今から7年前の平成25年3月4日、福岡県弁護士会の古賀和孝会長による公契約法及び公契約条例の制定を求める会長声明には、国際労働機関ILO94号、公契約における労働条項に関する条約について触れてありました。その条約の中身は、入札者に最低基準を守ることを義務づける公契約によって、賃金や労働条件に下方圧力がかからないようにするというものですが、その条約を既に世界の60か国を超える国々が批准しているにもかかわらず、我が国は批准していないこと、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツなどでは、国レベルで公契約規整を行っている事実が書かれていました。
    そして、我が国では、千葉県野田市が平成21年9月に公契約条例を全会一致で成立させたことに始まり、全国の自治体で相次いで公契約条例の制定の動きが始まったこと、さらに千葉県野田市では、公契約条例施行後、清掃委託業務に従事した労働者の賃金が1時間当たり101円上昇するといった効果が報告されていることなどが書かれ、確実に、その地域の労働者の賃金水準の引上げに寄与していることが示されていました。
    なぜ、日本は批准しないのか。三重県行政は、なぜ公契約条例を制定しないのか、そこには何があるのか、意見書の国への提出は平成16年、国は、いまだに公契約法の制定をしていません。そのような状況の中で、実に多くの県議会議員の方が、質問にこれまで立っております。議事録を見ていくと、平成24年3月に、舟橋裕幸議員、平成25年6月に藤田宜三議員、平成26年2月に中村進一議員、同じ年の9月に田中智也議員、平成30年には前田剛志議員、そして直近では、昨年の6月定例月会議で藤根正典議員が、公契約条例の早期制定を実現するべく質問しています。
    これまでの県土整備部長、知事の答弁を全部調べました。
    要約すると、公契約に代わる総合評価方式の導入、低入札調査基準価格の引上げ、施工体制確認型総合評価方式の導入で取り組んでいること、公共事業に係る公契約条例の県における制定については、今後の入札状況、あるいは国及び、既に条例を制定している自治体の動きや、また、その効果等など注視していきたいと考えていますという答弁でした。
    平成24年からは、建設産業の活性化に向けた三重県建設産業活性化プランが策定され、その後、現在のプランである新三重県建設産業活性化プランには、労働環境を改善する取組も進めているということが加わりましたが、条例の制定に向けては、注視して研究という同じ答弁が、ここ数年ずっと繰り返されています。直近の回答は、条例制定ではなく、実効性のある三重県建設産業活性化プランの実施によって、その課題解決を図っていることと、条例制定による企業経営に及ぼす影響や、受注者の事務負担などの状況を調査しましたが、明確には確認できないため、引き続き調査研究するとともに、国、他県、市の動向などを注視したいと考えている、そういう答弁でした。
    全国で50を超える地方自治体が条例を制定している状況ですが、今までと同じ答弁が繰り返されています。
    そこでお聞きします。公契約条例の目指すところの社会を三重県建設産業活性化プランにおいて、この8年間でどれぐらいの成果を上げているのか。プランの中に書かれている目標、適正な利潤が確保される価格での契約により、下請企業を含む関連企業に利潤が配分され、業界全体が安定経営できるように目指しますという目標の達成状況、また、建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われるために、令和2年度から次期プランにおいて、どのような手だてを打っていくのかを、県土整備部、渡辺克己部長にお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

    【県土整備部長】

    公契約条例が目指す社会を三重県建設産業活性化プランの中で、どのように取り組んでいくのかとの御質問にお答えいたします。
    公契約条例は、他県の事例を見ますと、提供されるサービスの質の向上や公契約に従事する者の適正な労働条件の確保など、労働環境の整備が目的とされており、この労働環境の整備の一つとして、適正な賃金の確保が求められています。この考えと合致するものとして、令和元年6月に改正された公共工事の品質確保の促進に関する法律において、受注者の責務として、市場における労務の取引価格等を反映した適正な下請契約を締結しなければならないとする規定が、新たに設けられたところです。現行の新三重県建設産業活性化プランにおいては、下請企業も含む建設企業の適正な利潤確保のため、低入札調査基準価格や最低制限価格の見直しなどによるダンピング受注の防止や、設計単価の早期改定による適正な予定価格の設定等の取組を行っており、これにより新三重県建設産業活性化プランの取組指標である売上高経常利益率は目標を上回っています。
    また、現在策定中の次期活性化プランにおいては、取組方針として、担い手確保や労働環境改善の取組と適正な利潤確保や安定経営の取組を位置づけることとしております。担い手確保や労働環境改善の取組では、法定福利費を明示した標準見積書の活用などによる適正な下請契約の促進や、適正な賃金の確保に資する取組として、技能労働者の賃金の実態調査を位置づけていきたいと考えております。
    また、適正な利潤確保や安定経営の取組では、現活性化プランに引き続き、ダンピング受注の防止や適正な予定価格の設定などに取り組みます。
    以上の取組を実施し、建設企業の利潤を確保することにより経営の安定化を図り、労働環境の改善にもつなげていきたいと考えており、今後も活性化プランの取組をしっかり進めてまいりたいと考えてございます。

    【意見】

    御答弁ありがとうございます。
    県においては、品確法ができたこと、そしてこのプランによって、元請、下請の大手や、中小企業、個人事業主の利潤を確保するために、適正な金額での契約に努めて結果も出していること、しかも、技能労働者の賃金の実態調査を位置づけするなど、現場労働者の労務単価が守られるように努力しておられることを、答弁によって理解いたしました。ただ、これって公契約条例の中身そのものではないかなと私は思います。ベクトルは同じであるということが、私ははっきりしたのではないかと思います。
    そこで、紹介したいのが1年半前に、国立国会図書館調査及び立法考査局の「公契約条例の現状~制定状況、規定内容の概要」という論文です。
    レファレンスという雑誌に掲載されていますが、そのまとめにはこう書かれています。政府は、国や地方公共団体が発注する契約で労働者の適正な賃金が確保されることは重要な課題であるとしつつも、賃金等の労働条件は労使が自主的に決定するのが原則であること。また、予算の効率的な執行を図る必要があること等を理由として、公契約に関する基本法の制定については、慎重な検討が必要であるとしている政府の見解がその雑誌には記してあるんです。このまとめで私が注目した文言は、予算の効率的な執行を図る必要があること、そして、国も慎重な検討という見解になっているところです。
    ここで、映写資料を見ていただきたいと思います。(パネルを示す)これ、自作資料です。これを見ていただいて、県が最初に契約を結ぶ元請との中で示される労務単価を9割は保障しよう、しかも、元請、下請の利潤も確保しようというのが公契約条例でございます。この県と下の企業、下請、孫請、労働者の皆さん、県と最初に契約を結ぶ、その契約の労務単価をひっくるめて保障しようというのが公契約条例であって、最低賃金法は、労使の関係の中での賃金を保障するというものであって、大きな違いがあると思います。
    私が訪ねてやり取りをした中で、水越弁護士は、発注側は限られた予算の中でやるべき事業をスムーズに回したいから、予算が膨らむようなことはしたくないという論理が働くのは当たり前で、結局、目の前のことでしか考えられないと言われました。
    この件において、大工職人で一人親方として頑張っている教え子と面談してきた内容を、今からお伝えさせていただきます。その教え子は、建設業界は、このまま行けば、最終的に生き残るのは大手のみになると予想しています。大手は、若者を抱えて、そこで育てて、受注に対して、自分のところだけで回すことができる。若者を抱えて、育てるなんてできるのは元請ぐらいで、自分ら孫請は、1日1万5000円から1万8000円で、そんなこと、到底無理。下請となる工務店も、仕事がない時期があるので、固定給を上げることすら難しいから、若者が入ってもすぐ辞める状態にある。一人親方とかに弟子入りしても、大工のスタートは1日5000円か6000円。一人前になるには5年はかかる。昔は、和室があったから10年はかかったけれども、でも、その間、食べていくことすらできない。だから、自分の知っている友達は、みんな足場や、とび、住宅基礎、鉄筋、水道、防水、解体の仕事をしている。大工になるのは、親が工務店をしているところの子どもぐらい。自分も、父親の仕事を手伝って覚えて、その後、工務店に入ったが、月給が上がらないと分かったから、すぐ工務店を辞めて一人親方になった。その教え子に、私が仕事が回ってくるのかと聞きました。そうしたら、職人が少ないから、昔より仕事の話は多くなったと言います。ほぼ毎日働いている。日当1万5000円やけど、日数が多いから道具も買い換えるし、労災や社会保険料も払える。昔は、相場で坪3万8000円やったけど、下請、孫請、その下にもなると、坪3万円を切る、それでも仕事が欲しいので、単価のことは上には言えないし、諦めていると話してくれました。弱い者たちが夕暮れ、さらに弱い者をたたく。ブルーハーツのトレイン・トレインの歌詞の一節ですが、教え子の話を聞いて思い出しました。弱い者たちが夕暮れ、さらに弱い者をたたく、これでいいのかと私は思います。三重県が発注元で、最低賃金法違反は本当に起こっていないと言えるのか。教え子に、最初の元請との契約の段階で、決められている現場労働者の労務単価を9割守ることができればと聞くと、そんなのできるのと不思議そうな顔をして、こう言いました。元請が今までのような利益を得ようとしたら、受注する際の契約金額が上がらないと無理やと思うと。私が、最後に、実現するように頑張るからと言いますと、にこっとほほ笑んで、先生、ありがとうと帰っていきました。
    持続可能な社会の構築を考えたときに、三重県建設産業活性化プランと併せて条例制定をしたほうが、実効性が高いことは言うまでもありません。条例制定には、乗り越えなければならない壁が幾つもあるわけですが、それらは複合的に絡み合い、それらの解決には困難が伴い、先の見えないものであり、労力だけが費やされてしまう可能性もあります。実際問題、制定には困難を伴うことが予想されるので、このような判断になっている部分があるのではないかと推察します。
    この問題を解決するには、発注元の部による調査研究だけでは、先を見越した解決ができるとは到底思えません。県土整備部では見えないところや、踏み込んではいけない領域もあるはずです。公契約による、末端の労働者の賃金を守るために、まずは、建設業者の経営基盤の強化で成果を上げてきている県土整備部の努力をさらに生かすためにも、部局横断的なチームの結成が必要であると思います。

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