県政レポートVol.03

2020.12.01 発行
一般質問をするにあたり大切にしたこと
正義の反対は、異なる正義でしかありません。

一つの正義を知ることは、視野を広げて物事を多面的に捉えられるチャンス。いくつもの正義と出会うことが、己の道を誤らないことにつながります。

ですが、異なる正義と出会ったとき、「その正義をじっくりと傾聴することで道が開ける」とは分かっていても、それはなかなか難しいものです。

「正義を振りかざし、異なる考えを持つ相手を不義・悪と見なした攻撃が、人格否定の域まで達してしまう」

「正義だから何を言っても許される」
という世間の風潮が社会を歪め、子どもの健全育成にも悪影響を及ぼしています。

今、私が教育現場にいたら、「人格否定までする正義からは 逃げなさい。そんなことに注目する社会を 自分たちから変えていこう。」、と子どもたちに伝えると思います。

政治家としての私の心構えは、行政の方の考え方や意見をしっかり聞いて、またこちら側の考えや想いを直球で伝えて対等な立場で議論を重ねるというものです。

今回、一般質問をするにあたり私の正義と異なる正義を大事にしました。

今回は、全力で取り組んだはじめての一般質問の特集となります。

喜田健児政治とはどんなものなのかを知っていただき、叱咤激励をいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
子どもたちの生きる未来に責任ある立場にいる政治家として
【議長】
 県政に対する質問を継続いたします。2番 喜田健児議員。

【喜田健児】
 皆さん、こんにちは。私は、新生みえ、松阪市選出、喜田健児でございます。
 議長のお許しをいただき、通告通り議会のルールを守りながらも、子どもたちの生きる未来に、教え子たちが生きる現代に、責任ある立場にいる政治家として何ものも恐れず、ひるまずに、よりよい三重県をめざして果敢に挑んでいきたいと思います。どうかよろしくお願いします。
公契約条例
私にとって記念すべき一般質問デビューの一番目に選んだのは、「公契約条例に関わっての三重県建設産業活性化プラン」についてです。
 三重県に「活力」を見いだし、三重県経済の好循環を作り出して県税収のアップを図る、そして、最終的に教育予算を増やす、そのような思いから、たどり着いた質問がこれであります。

 公契約条例に関して、過去の議事録を全て見ました。そして三重県建設業協会の役員の皆さんとの団体懇談会で確認したことをもう一度見直し、三重県建設労働組合の執行部への聞きとり調査も行いました。
 さらに、津市・前葉市長並びに、担当の総務部の方との意見交換で学び、水越法律事務所の水越聡弁護士と、私の教え子である中小企業再建サポート会社の社長から学習レクを受け、これまでの学びをもって、県土整備部の担当の方とやり取りしました。
 その後、十六歳から大工の職人となった教え子との面談をし、実に多くの方のご意見を聞かせていただき、この場に臨んでおります。
建設労働者の適正な賃金や労働条件の確保
平成16年12月17日、第4回三重県議会定例会で、公契約法の推進など、「公共工事における建設労働者の適正な労働条件の確保に関する意見書」が、全会一致で可決し、衆参両院議長、内閣総理大臣、総務大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、国土交通大臣に提出をされています。

 その意見書には、建設業の就業者数は全産業の約10%を占めており、我が国の基幹産業として、経済活動と雇用機会の確保に大きく貢献していることが、まず押さえられています。
 しかし、建設産業の特徴である、「元請」と「下請」という重層的な関係の中で、建設労働者の賃金体系は常に不安定な状態にあり、加えて、不況下における受注競争の激化と、近年の公共工事の減少が、施工単価や労務単価の引下げにつながり、「現場で働く労働者の生活」に深刻な影響を及ぼしていることが書かれています。
 そして、その解決のためにも、公契約法の制定について検討すること、建設労働者の賃金、労働条件の確保が、適切に行われるよう実効ある施策を実施することを求めています。

 また、その意見書では、諸外国では公契約における、適正な賃金の支払いを確保する法律、いわゆる公契約法の制定が、進んでいることにも触れられていました。
なぜなんだ?
そこで、さらに調査を進めてみると、入札者に最低基準を守ることを義務づける公契約によって、「賃金や労働条件に、下方圧力がかからないようにする条約」を既に世界の六十カ国を超える国々が批准しているのです。にもかかわらず、我が国は批准していません。
 フランス、アメリカ、イギリス、ドイツなどでは、国レベルで公契約規制を行っている事がわかりました。

 なぜ、日本は批准しないのか。三重県行政は、なぜ「公契約条例」を制定しないのか、そこには何があるのか。国は、いまだに公契約法の制定をしていません。そのような状況の中で、実に多くの県会議員の方が、質問にこれまで立っておられます。

 これまでの県土整備部長、知事の答弁を全部調べました。
 要約すると、「公契約に代わる総合評価方式の導入、低入札調査基準価格の引上げ、施工体制確認型総合評価方式の導入で取り組んでいること、公共事業に係る公契約条例の県における制定については、今後の入札状況、あるいは国及び、既に条例を制定している自治体の動きや、また、その効果等など注視していきたいと考えていきます。」という答弁でした。

 全国で五十を超える自治体が、条例を制定している状況ですが、今まで同じ答弁が繰り返されています。

 そこでお聞きします。公契約条例の目指すところの社会を、三重県建設産業活性化プランにおいて、この八年間でどれぐらいの成果を上げているのか、業界全体が安定経営できるようにめざしますという目標の達成状況、また、建設労働者の賃金、労働条件の確保が適切に行われるために、令和二年度からの次期プランにおいて、どのような手だてを打っていくのかを、県土整備部、渡辺克己部長にお伺いしたいと思います。

【渡辺克己県土整備部長】
 公契約条例がめざす社会を、三重県建設産業活性化プランの中で、どのように取り組んでいくのかとのご質問にお答えをいたします。
 現行のプランにおいては、下請企業も含む建設企業の適正な利潤確保のため、低入札調査基準価格や最低制限価格の見直しなどによるダンピング受注の防止や、設計単価の早期改定による適正な予定価格の設定等の取組を行っており、これにより取組指標である売上高経常利益率は、目標を上回っています。
 また、現在策定中の次期活性化プランにおいては、取組方針として、担い手確保や労働環境改善の取組と適正な利潤確保や安定経営の取組を位置づけることとしており、今後も活性化プランの取組を、しっかり進めてまいりたいと考えているところでございます。

【喜田健児】
 ご答弁ありがとうございます。県においては、努力しておられることを理解いたしました。ただ、ベクトルは同じであるということが、はっきりしたのはないかと思います。
ベクトルは同じ
そこで紹介したいのが、国立国会図書館調査及び立法考査局の「公契約条例の現状、制定状況、規定内容の概要」という論文です。

 政府は、国や地方公共団体が発注する契約で、労働者の適正な賃金が確保されることは、重要な課題であるとしつつも、「賃金等の労働条件は、労使が自主的に決定するのが原則であること。また、予算の効率的な執行を図る必要があること等、公契約に関する基本法の制定については、慎重な検討が必要である。」という見解なのです。

 私は「予算の効率的な執行を図る必要があること」「国も慎重な検討という見解になっている」という文言に着目しました。

 県が最初に契約を結ぶ元請との中で示される「労務単価を9割は、補償しよう、しかも、元請・下請の利潤も確保しよう」というのが、公契約条例です。
 最低賃金法は、「労使の関係の中での賃金を保障する」というものであって、大きな違いがあると思います。
教え子の訴え
私が水越弁護士を訪ねて、やり取りをした中で、「発注側は、限られた予算の中で、やるべき事業をスムーズに回したいから、予算が膨らむようなことは、したくないという論が働くのは当たり前で、結局、目の前のことでしか考えられない。」と言われました。

 この件において、大工職人で一人親方として頑張っている教え子との面談内容を、今からお伝えさせていただきます。その教え子は、「建設業界は、このまま行けば、最終的に生き残るのは、大手のみになる。」と、予想しています。
 「元請は、若者を抱えてそこで育て、受注に対して自分のところだけで回すことができる。」
 さらに彼は言いました。
 「自分ら孫請は、一日一万五千円から一万八千円で、そんなこと、到底無理。下請となる工務店も、仕事がない時期があるので、固定給を上げることすら難しいから、今の若者が入ってもすぐ辞める状態にある。一人親方とかに弟子入りしても、大工のスタートは一日五千円か六千円。一人前になるには五年はかかる。昔は和室があったから十年はかかった。その間、食べていくことすらできない。だから、自分の知っている友だちは、みんな足場や、とび、住宅基礎、鉄筋、水道、防水、解体の仕事をしている。大工になるのは、親が工務店をしているところの子どもぐらい。」
 その教え子に、「仕事は回ってくるのか」と聞きました。すると、「職人が少ないから、昔より仕事の話は多くなった。ほぼ毎日、働いている。日当一万五千円やけど、日数が多いから道具も買い換えれるし、労災や社会保険も払えるよ。昔は、相場で三万八千円やったけど、下請、孫請、その下にもなると、坪三万円を切る。それでも仕事が欲しいので、単価のことは上には言えないし、諦めている。」と話してくれました。
弱いところに希望の光を
「弱い者たちが夕暮れさらに弱い者をたたく」
ブルーハーツのトレイン・トレインの歌詞の一節ですが、教え子の話を聞いて思い出しました。弱い者たちが夕暮れ、さらに弱い者をたたく。これでいいのかと私は思います。

 三重県が発注元で、最低賃金法違反は本当に起こっていないと言えるのか。

 教え子に、最初の元請との契約の段階で、決められている現場労働者の労務単価を九割守ることができればと話すと、不思議そうな顔をしてこう言いました。
「そんなのできるの? でも、元請が今までのような利益を得ようとしたら、受注する側の契約金額が上がらないと無理やと思う。」

 私が、最後に「実現するように頑張るでな。」と言いますと、にこっとほほ笑んで、「先生、ありがとう。」と帰っていきました。

 持続可能な社会の構築を考えたときに、三重県建設産業活性化プランと併せて条例制定をしたほうが、実現性が高いことは言うまでもありません。
 実際問題、制定には困難を伴うことが予想されるので、このような判断になっている部分があるのではないかと推察をします。
解決策提案
この問題を解決するには、発注元である部による調査研究だけでは、先を見越した解決ができるとは、到底思えません。
 公契約による、末端の労働者の賃金を守るために、まずは、建設業者の経営基盤の強化で成果を上げてきている、県土整備部の努力をさらに生かすためにも、部局横断的なチームの結成が必要であると思います。

 そこでお聞きしたいと思います。この四月から、第二期三重県まち・ひと・しごと創生総合戦略の具体的手だてとして、部局横断的な連携について、県当局の考えを戦略企画部、福永部長にお伺いします。
部局横断的チーム編成を
【福永和伸戦略企画部長】
 それでは、まち・ひと・しごと創生総合戦略について、部局横断した取組が必要と考えるが、どのように取り組んでいくのかということで、答弁させていただきます。
 三重県では、人口の減少に歯止めをかけるとともに、地域の自立的かつ持続的な活性化を実現するため、第一期三重県まち・ひと・しごと創生総合戦略に沿って、平成27年度から進めてきました「地方創生の取組」や「課題」を踏まえ、第二期の戦略を、みえ県民力ビジョン・・第三次行動計画と一体化して取りまとめ、これらを進めるためには、部局を越えた様々な分野からの取組が必要と考えています。
 実例としましては、令和2年度におきましても、関係部局が連携し、三重県への移住促進に向け、関心を高めるきっかけづくりとして、大都市部における県の情報発信や交流の場づくりに取り組んでいきます。就職氷河期世代の支援では、様々な主体が関わるプラットフォームを設置し、就職相談支援や多様な働き方、社会参加の場の創出の取組を進めることとしています。
 こうしたことに加えまして、第三次行動計画の基本理念に「Society5.0やSDGsの考え方」の二つの視点を、全ての部局の企画立案のよりどころとしまして、部局横断的な取組の促進を図り、イノベーションの創出につなげてまいります。
諦めない
【喜田健児】
 御答弁をいただき、その概要と事業の具体的イメージができました。ありがとうございます。

 建設労働者の適正な賃金確保といえば、「県土整備部」となりますが、公契約は、ごみ収集や、清掃員、警備員、民間委託の保育士などもあるわけで、これは、他の部局にまたがる事案です。ここ数年間、この事案に関して、他の部局において「主体的」「自主的」に取り組まれてきているのか、そこの部分が一番知りたくなりました。
 今後、部局横断的に、県土整備部、雇用経済部、出納局も加わるプロジェクトチームを結成して、調査研究を進めていくことをお願いさせていただきます。
 さらに最低労務単価を五年以内に示すことを明記して、条例を制定し三年目に入りますが、労働者よし、経営者よし、ひいては県民よしを満たしている津市ともタッグを組み、進めていくことができれば、課題を潰して、光を見いだすことは、可能であると私は思います。

 複合的に絡み合った課題に対応できる組織になるための「部局横断的な連携」が始まります。
 その組織を作っていくに当たって、私が一番危惧するところは、直属の上司やその上の管理者にとって、「労務管理」が難しくなるということです。連携を成功させるためには、部長級以上の管理者の意識改革が先決です。
組織リーダー論 鈴木知事 × 喜田健児
昨年のラグビーワールドカップで、日本チームのヘッドコーチ「ジェイミー・ジョセフさん」が大切にしたことは「多様性の尊重と自主性の尊重」です。
 選手たちに追い求めたのは「自主性と主体性の強化」でありました。
 コーチ陣は、そのための環境づくりをすることであり、支配するのではなく、支援するサーバントリーダーとなり、確固たる信念の下、歩みを進めたわけです。
   
 その結果が「世界と戦えるチーム」となり、日本中を感動の渦に巻き込み、勇気・元気・希望という、生きる活力を与えたわけです。

 鈴木県政十年目となる節目の年度を目前に控えて、まさに他方から見て、超強力的なトップダウン型、支配型リーダーと見えてしまう知事ですが、実はそうではなくて、一期、二期、三期とリーダーとしての在り方を戦略的に変革しているのではないかと思います。その表れが部局横断的連携だと思います。

 複合的に絡み合った課題に対応していくために、複雑化する行政運営に当たっては、サーバントリーダーシップが必要になってきていると思います。そこで、知事の考える組織のリーダーの在り方について、ぜひともお聞きします。

【鈴木英敬知事】
 組織のリーダーの在り方について、答弁をさせていただきます。
 現在は、過去の経験が通用せず、経験だけでは正解を出せない時代であり、これまでの成功セオリーが必ずしも通用しない中、試行錯誤を繰り返しチャレンジしなければ、最適機会が見いだせない時代と認識しています。

 先般、リーダーシップ論研究者でもある、友人の日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター・中竹竜二氏から、リーダーシップに関する講演をいただいたのですが、リーダーは「周りを引っ張るリーダーシップと、周りを支えるフォロワーシップの両方を、バランスよく持たなければならない」との趣旨を話してくれました。
結果だけを問わない
私自身も、組織のリーダーとして、日々職務に当たる中で、大変共感するものでありましたし、その趣旨は、サーバントリーダーシップとも共通するところがあると考えています。
 私は、リーダーシップやマネジメントの在り方も他人と比較する必要はなく、人それぞれでいいということを、常々、職員に申し上げています。どのような形でリーダーシップを発揮していくにしろ、結果だけを問うのではなく、お互いが協働したり、認め合ったり、信頼関係を築いたりといった「職員間の関係の質」をまずは高めていくことが、組織のマネジメントを成功に導くためには、不可欠であります。

 この第三次行動計画や、第三次三重県行財政改革取組の最終案などにおいても、面談の質の向上、コミュニケーションの充実などを進めていくことを検討しています。私自身、自分のリーダーとしての在り方、任せる部分の在り方、そういうものも、まだまだ至らぬところではありますけれども、考えながら日々職務に当たらせていただいているところです。
勝手に育つ
【喜田健児】
 とても意味があるご答弁をいただいたように、私は感じております。ありがとうございました。
 たまたま人事異動で割り当てられ、本人がやりたい仕事でもなく、問題意識がなかったとしても、「上司がサーバントリーダー」であったとするならば、他人任せや指示待ちの体質、空気感はその部署にはなく、職員のモチベーションは上がり「勝手に育っていく」と思います。
 県職員の情熱が、さらに表に現れることになるのではないかと期待を申し上げます。

 複雑化する社会の中で生まれる課題や、予想される未来における課題は、ひとつの部署では解決できません。部局横断的な連携で解決をめざしていく、大いに期待しております。

 これまでは、資本主義によって経済が伸びれば、中間層と低所得者層に一定の恩恵が働いてきましたが、今は数%の人しか、その恩恵がないという経済システムになってきています。これでは、格差が広がる一方です。
 財力を外に逃がさず、三重県経済を循環させるとともに、外からの誘致で三重県経済に財を放り込んでもらう、この絡み合いにより相乗効果を生ませて、経済の循環を作っていくことが大切です。

 しかし、企業の社齢と雇用の関係を見てみると、社齢が高い企業群ほど退出や規模縮小により「雇用の純減」が大きく、起業から五年までの若い企業のほうが「雇用の創出」が大きいという調査結果が出ております。これはアメリカでも同様の傾向ということです。
 長く続けていくというのも大事ではありますが、成長はどこかで緩やかに止まり、安定期に入ってしまいます。
 変わらなければ、そのビジネスモデルが通用しない時代に入って、衰退してしまうということが言えます。
 既存の事業所も新規事業所のように、時代に合った製品やサービスを生み出して、変化していくことが必要となるということです。

 雇用が回るということは、法人税だけでなく、住民税も含めて、税収アップにつながります。そういう意味において、創業やスタートアップを推進し、支援していくことが、とても重要なことであると思います。

 そこで、新しい産業の創出、既存の事業を継承し、第二創業で新しいビジネスに挑戦する、そのような人たちを「応援」「支援」する、「とこわかMIEスタートアップエコシステム事業」にかける情熱、いわゆる夢や目標、それを実現するための事業概要、狙い、具体的取組を、雇用経済部村上亘部長にお伺いいたします。
三重で開業スタートアップエコシステム
【村上亘雇用経済部長】
 とこわかMIEスタートアップエコシステムの概要、狙い、具体的取組内容について、御答弁を申し上げます。
 スタートアップは、地域におけるイノベーションや、新たな価値創造が進展する可能性を提示し、新たな経済循環や多様な働く場を創出するなど、地域の課題解決や活性化の担い手として、重要な存在だと考えております。

 本県における開業率は、「下降傾向」にございまして、さらなる起業の促進に向けて、新たな視点での支援が必要となっていると認識をしております。

 具体的には、まず、首都圏等で活躍する複数の先輩起業家やクリエーターと、県内学生や企業、新分野への展開を目指す方との企業コミュニティーを形成し、ワークショップの開催などによりまして、起業への機運を高めます。 そして、第一段階として、新規事業のネタの発掘や、実証プロジェクトを実施するフィールドを発掘。
 第二段階の先輩起業家らのアドバイスや、人材のマッチングにより、事業計画や内容を磨きます。
  第三段階では、磨き上げた事業について、ピッチコンテストの開催などによりまして、金融機関等からの資金調達につなげます。
 第四段階として、事業が自立した起業家には、コミュニティーの中で、新たに事業の立ち上げに挑戦する、後輩起業家への支援を行っていただきます。

 このような支援の取組が循環し、ネットワークが拡大する仕組みを構築いたします。
 本県に長く引き継がれてきたとこわか精神の下、地域資源を活用したスタートアップを次々と生み出すことで、地域経済の活性化に情熱を持って、取り組んでまいりたいと思っております。

【喜田健児】
 ご答弁を聞き、県民の一丁、一旗上げてやるぞ、何かやってやるぞという胸の鼓動の高鳴りが、本当に聞こえてきそうな中身ではないかと、私は心から思います。
 自分たちのもともとの強みを生かした形で「新規事業」に踏み出したいという経営者は、県内に多いのではないでしょうか。
 成功者のアドバイス、ノウハウ、そして、関係する分野でのネットワークの拡大、それがチーム化する、心強いことで、三重県に活力が生まれるのは間違いないと思いますし、この事業に県民の皆さんが注目するように、議員としても、発信をしていきたいというふうに思っております。

 三重県、そして地域の課題が山積していて、しかも、その一つ一つは、非常に重く、待ったなしの危機的状況にある中で、その解決が一筋縄でいかないのが、水産・海運業界が抱えている課題です。
 水産王国みえの復活のためには、人材の供給を図る水産高校が果たす役割は、重大だと言えます。その水産高校の抱える課題は「農林水産部」、「雇用経済部」、「教育委員会」、「防災対策部」、「総務部」にまたがる課題でもあります。
SBPソーシャルビジネスプロジェクト地域の課題は子どもが解決
クリエーティブな発想というのは、県行政にも県議会にも、政治家にも求められています。
 しかし、一番クリエーティブな発想ができて、それを実行して、成果を上げることができるのは、間違いなく「未来の大人である子どもたち」だと思います。

 文科省においても、若者の学びを通じた地域ビジネスの創出に当たって、必要となる推進体制及び政策的支援の在り方を検討し、全国普及を図ることを目的に、SBPの調査研究報告会を実施しています。
 ちなみに、このSBPの中心人物が高校生レストラン「まごの店」の立て役者である多気町在住の岸川政之さんです。
もう一歩も引けない!実習船しろちどり代船建造を
実習船しろちどりの船長から、お聞きしたことを紹介します。
 約四十日のパラオ航海での乗船実習を終え、寄港して間もない頃に、「東日本大震災」が起こり、実習船しろちどりで何かできないのかという話があったといいます。
 その当時は、リスク等がうまく整理されずに活用には至らなかったそうですが、現場としては、災害時に実習船しろちどりの機能を最大限活用して、何かしら力になりたい、災害時の救援に協力したいという思いが強く、その準備もあるとのことです。

 平成二十八年度二月議会で、山口千代己教育長は、
「水産高校では地元自治体と申し合わせを交わし、災害発生時の緊急避難として、しろちどりの生徒の部屋、トイレ、シャワー室、教室を避難所に提供できる。」と答弁しています。

 船長は、
「インフラとしての船は、非常に有利です。衛星通信ですので、どれだけの災害が起こっても通信が寸断されない。冷凍能力でマイナス五十度まで冷やすことができ、いろんな物資を長期間、大量に保存することができる。船内には、七十人分の寝泊まりする場所もああり、海水から一日、最大十五トンの真水を作ることができるし、運べる水は百トン、数時間で約百名分の炊き出しができる能力がある。」と言われました。
 熊本地震のときには、実習船熊本丸が、お風呂が入れなくなった地域に着岸して、シャワーを提供しています。他県の実習船も、炊き出しの手伝いに行ったという事例も聞いています。

 この災害時の救援という観点からも、実習船しろちどりの活用をぜひとも部局横断的な連携の上、協議していただきたいと思います。
子どもたちの命を守る
そうなると、実習船しろちどりの代船建造については、何としても実現をしなければならない、真に必要な施策であると思われます。

 未来の海運業で活躍する子どもたちの、尊い命を守るために。また、多くの尊い命を救うために、実習船しろちどりの代船建造に向けた課題の克服し、「水産王国みえ」の復活に向けて、水産高校がその役割を果たしていくためにも代船建造が、部局横断的な連携による取組によって、何とかできないのか、そういった視点で、今、教育委員会として考えていることについて、廣田教育長にお伺いをしたいと思います。

【廣田恵子教育長】
 まず、実習船しろちどりの代船建造に向けた検討についてでございます。
 県立水産高校の実習船しろちどりは、毎年四回の航海実習を実施しています。 この航海は、船舶の運航や甲板作業、機関作業、カツオの一本釣り等の漁業実習や海洋資源調査等の多目的実習、及び調査等を目的としています。

 議員から、しろちどりの老朽化のお話がございましたが、建造から二十年が経過している中、毎年、夏季ドックでは、点検や部品交換などの整備を行っています。
 また、近年では燃料タンクの補強や配電盤更新などを実施したほか、本年度行った五年に一度の大規模定期点検では、救命設備の更新、ソナーの清掃点検、造水装置の修繕など、安全を最優先に点検整備を行っています。

 今後の水産高校の教育については、沿岸、近海漁業、養殖業など、県内水産業の動向を踏まえる必要があると考えます。
 また、水中ロボットによる船底検査や、アワビの生育調査など、AIを活用した新しい水産教育も積極的に取り入れるなど、Society5.0の時代に対応した水産教育を進めていくことも重要です。

 そして、何よりも子どもたちの学習ニーズや進路希望に応えられるよう、水産教育を考えていく必要があります。 実習船の今後については、このような状況を鑑み、検討していきたいというふうに考えております。

 次に、水産高校における地域や部局との連携の取組についてでございます。
 水産高校の卒業生は、例年、専攻科を含めた進学が三十%ほど、就職が七十%ほどで推移しており、就職する生徒のうち、約三十五%ほどが船舶関係、漁業、食品製造業等の水産関連産業に従事をしております。

 そのほか、特徴的なこととして、水産高校は一九九七年二月から、パラオ高校と姉妹校提携を結んでおります。航海実習で生徒がパラオ共和国を訪問した際には、パラオの生徒にしろちどりの船内を案内したり、食文化の交流をしたりしております。

 二〇二一年に志摩市で開催される太平洋・島サミットの地元プログラムにおいて、水産高校の生徒が、島嶼国の首脳に向けて発表する機会を設けることができないかなど、関係部局と協議をすることを考えていきます。

 これからの水産教育については、地域等との連携、部局横断的な連携をさらに進めて、水産業界や生徒保護者の学習ニーズに応えていきたいと考えております。
“検討する”に期限を入れて
【喜田健児】
 ご答弁ありがとうございます。
 部局横断的な連携の中で、課題解決を図っていただきたい。「検討する」という答弁に、期限を入れさせていただきたいと思います。いつまでに検討して、いつまでに結果を出すのかという、答弁をいただきたいなというふうに思うのです。
 議会のルールにのっとって、私は質問を進めてまいりましたが、もしかしてルール違反か分かりませんけれども、知事、何とか実習船しろちどりの代船建造に踏み切っていただくような、「検討する」という答弁ではなくお答えをいただけないかと。
 時間がなくなりましたけど、あと数秒あると思いますので、よろしくお願いします。

【議長】
 鈴木英敬知事、答弁は簡潔に願います。

【鈴木英敬知事】
 時期を申し上げるには、ちゃんとファクトを整理しないといけない。今、手元にありませんので。
 いずれにしても、教育委員会が検討する中では、しっかり期限を決めながら、スケジュール感を持って検討するように要請しておきたいと思います。

【喜田健児】
 これでなくなったんでしょうか。これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)